2021-08-10 更新
実際に起きた事件を基に作られたこの作品は、ペルー出身の女性監督メリーナ・レオンの長編デビュー作。2019年カンヌ国際映画祭・監督週間で注目を集め、以来世界十数ヵ国の映画祭において作品賞他32部門で受賞。2020年アカデミー賞®・国際長編映画部門ではペルー代表に選ばれ、ノミネートは逸したものの、その抑制を利かせた演出スタイル、モノクロ×スタンダードの画面に際立つヴィジュアル・センスは、新たな才能の誕生を実感させる。
へオルヒナを演じたパメラ・メンドーサは、レオン監督に見出された無名の新人。その無垢な存在感、自然体の演技は高く評価され、リマ ラテンアメリカ映画祭では特別賞(女優賞)を受賞している。
赤ん坊を奪われた母親の悲哀と絶望、そして、孤独な新聞記者が内に秘めた苦悩と使命感を描いたこの作品は、貧困と格差、人身売買、民族差別とジェンダー差別、全体主義とテロリズムといった社会問題をも浮き彫りにし、それらが今の時代においても何ら変わっていないことを静かに提示してみせた野心作だ。
1988年、政情不安に揺れる南米ペルー。貧しい生活を送る先住民の女性、20歳のヘオルヒナは、妊婦に無償医療を提供する財団の存在を知り、首都リマの小さな診療所を受診する。
数日後、陣痛が始まり、再度診療所を訪れたへオルヒナは、無事女児を出産。しかし、その手に一度も我が子を抱くこともなく院外へ閉め出され、赤ん坊は何者かに奪い去られてしまう。
夫と共に警察や裁判所に訴え出るが、有権者番号を持たない夫婦は取り合ってもらえない。新聞社に押しかけ、泣きながら窮状を訴えるヘオルヒナから事情を聞いた記者ペドロは、事件を追って、権力の背後に見え隠れする国際的な乳児売買組織の闇へと足を踏み入れるが――。
(2019年、ペルー=スペイン=アメリカ合作、上映時間:97分)
キャスト&スタッフ
監督・脚本:メリーナ・レオン
脚本:マイケル・J・ホワイト
撮影監督:インティ・ブリオネス
音楽:パウチ・ササキ
出演:パメラ・メンドーサ、トミー・パラッガ、ルシオ・ロハス、マイコル・エルナンデスほか
配給
シマフィルム アーク・フィルムズ インターフィルム
東京:ユーロスペース、横浜:シネマ ジャック&べティ、名古屋:伏見ミリオン座にて絶賛公開中、以降全国順次ロードショー
■ オフィシャル・サイト: namonaki.arc-films.co.jp (外部サイト)
関連記事
・ティーチ・イン