2021-02-27 更新
ダニエル・シュミット監督の名作『ヘカテ』(1982)が、デジタル・リマスター版で4/23(金)より、Bunkamuraル・シネマを皮切りに全国で公開される運びとなった。ポスター・ビジュアル、場面写真と併せて、映画評論家・蓮實重彦氏よりコメントが到着した。
1941年に生まれ、2006年に逝去したスイスの映画監督ダニエル・シュミットの代表作『ヘカテ』(82)が、デジタル・リマスター版として、4/23(金)よりリバイバル公開される運びとなった。
シュミットの初の日本劇場公開作として好評を博し、その後の、ルキーノ・ヴィスコンティらに絶賛され、ヴェネツィア国際映画祭最優秀新人賞を受賞したデビュー作『今宵かぎりは…』(72)、傑作『ラ・パロマ』(74)などの相次ぐ公開への嚆矢となり、ひそやかなシュミット・ブームの幕開けとなった伝説的な名作。
第二次世界大戦の中立国スイスの首都ベルン。フランス大使館主催の豪華絢爛なパーティーの会場で外交官の男ジュリアンが、追憶にふけっている。約10年前、赴任した北アフリカの植民地で出会い、狂ったように愛した謎のアメリカ人妻クロチルドのことを……。
原作は、外交官であり、第二次大戦後の亡命先のスイスでココ・シャネルの伝記も執筆した、戦間期の文壇の寵児ポール・モランの小説「ヘカテとその犬たち」。撮影は、ゴダールやシャブロル、オリヴェイラら巨匠の諸作を務めた名匠レナード・ベルタ、シュミットも盟友であるR・W・ファスビンダーの『ローラ』『第三世代』ラウール・ヒメネスがプロダクション・デザインを務め、マルグリット・デュラスとのタッグで知られるカルロス・ダレッシオが音楽を手がけるなど、世界各国から一流スタッフが集結した。
外交官役を演じるベルナール・ジロドーが劇中で身にまとう白のリネン・スーツなどの衣装は、「クリスチャン・ディオール」が本作のためにデザインしたもの。ヒロインのローレン・ハットンは、ポール・シュレイダー監督『アメリカン・ジゴロ』(80)など俳優として活動のほか、『ヴォーグ』誌専属のモデルとしても有名で、2018年には史上最年長の73歳で同誌の表紙を飾るなど、生涯現役のレジェンド・モデルとして活躍を続けている。
また、ダニエル・シュミット生誕80年を記念したこの度のリマスター版の公開に際し、シュミット本人とも親交が深く、ヴィム・ヴェンダース、ビクトル・エリセ、クリント・イーストウッド、そしてこのダニエル・シュミットの4名を「73年の年世代」と呼称し、映画史に決定的な変容をもたらした作家として称揚、伝説的な映画雑誌『リュミエール』の創刊号(85年)で彼らを特集し、その日本での受容に尽力した映画評論家・蓮實重彦氏よりコメントも到着した。
◆ 蓮實重彦氏 コメント
求めあう男女がとりわけ大きな悦びを享受するのは、素肌で交わることにもまして、ラフなドレスをまとったままの女を、衣服を脱ごうともしない男が背後から抱擁することによってである。
それにふさわしい懐古的なワルツのリズムと、二階の欄干という宙吊りの空間とを二人に提供することで、ダニエル・シュミットは、もっとも心に浸みる忘れがたいラブ・シーンを映画の歴史に刻みつけてみせた。この場面、必見である。
(オフィシャル素材提供)
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