2021-01-28 更新
神秘の地・チベットの大草原。牧畜をしながら暮らす、祖父・若夫婦・3人の息子の三世代の家族。昔ながらの素朴で穏やかな生活をしていたが、受け継がれてきた伝統や価値観は近代化によって少しづつ変わり始めていた。そんなある日、子どもたちのあるいたずらによって、家族の間にさざ波が起き始める……。信仰との向き合い方、牧畜民として生きる厳しさ、伝統的な役割を果たしてきた女性たちの選択――それぞれの想いは交錯し、チベットの空に浮遊していく。時代に翻弄される家族のジレンマを時にユーモアを込めて紡ぎだし、広大な草原、猛々しい羊たち、厳しい土地で生きる人間のたくましさを圧倒的な映像美をもって映し出す。変わりゆくチベットの狭間で生きる人たちの姿に我々は強く心を掴まれ、余韻を残すラストに「あなたならどうする?」と問いを投げかけられるに違いない。
監督は、作家としても高い実績をもつ、チベット映画の先駆者 ペマ・ツェテン。故郷・チベットの市井の人々に寄り添う眼差しで作品を生み出し、これまでに国内外の映画祭で40以上の賞を受賞。イランの名匠アッバス・キアロスタミや中国のウォン・カーウァイも、その才能に惚れ込み高く評価した。本作もヴェネチア国際映画祭をはじめ、世界中の映画祭に出品され「小説を読むかのような豊かなタペストリー、なかなかこんな映画には出会えない!」(Asian Movie Pulse)、「賢明で、叙情的なユーモアに満ちている」(FIVEFLAVOURS)など絶賛評が並んだ。そして、もはや常連となった東京フィルメックスでは、その高いクオリティと詩的な世界観が評価され、『オールド・ドッグ』(11)、『タルロ』(15)に続き、審査員満場一致で3度目の最優秀作品賞に輝いた。本作が、待望の日本劇場初公開作品となる。
母親役を演じるのは、舞台俳優のソナム・ワンモ。複雑な心の揺れを見事に演じている。そして父親役を演じるのは、ペマ監督作品の常連であるジンバ。一家を支える大黒柱のたくましさ、その陰で苦悩する姿が印象深い。さらに演技経験のない子どもたちの天真爛漫な姿が生き生きと輝く。撮影の1ヶ月前から一緒に過ごしたことで、この家族が確かにそこに生きているという説得力を持たせている。また、撮影は監督の故郷である青海湖の近辺で主に行われた。撮影・リュー・ソンイエが作り出す、詩的で幻想的な映像美には思わず息を呑み、ペイマン・ヤズダニアンが奏でる心揺さぶる旋律が、物語を大きく盛り上げている。
神秘の地・チベットの大草原。牧畜をしながら暮らす、祖父・若夫婦・3人の息子の三世代の家族。昔ながらの素朴で穏やかな生活をしていたが、チベットに暮らす牧畜民の家族。近代化は進み、中国の一人っ子政策の波が静かに押し寄せていた。
そんなある日、母ドルカルの妊娠が発覚する。葛藤の末、彼女が選んだ道とは? 信仰との向き合い方、牧畜民として生きる厳しさ、伝統的な役割を強いられてきた女性たちの選択――。
それぞれの想いは交錯し、チベットの空に浮遊していく。
(2019年、中国、上映時間:102分)
キャスト&スタッフ
監督・脚本:ペマ・ツェテン
出演:ソナム・ワンモ、ジンバ、ヤンシクツォほか
配給
ビターズ・エンド
シネスイッチ銀座ほかにて絶賛上映中
■ オフィシャル・サイト: bitters.co.jp/hitsujikai/ (外部サイト)
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