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2019-03-02 更新
白川昌生(美術作家)、前田エマ(ファッションモデル)
映画『ヨーゼフ・ボイスは挑発する』は、既存の芸術概念を拡張し誰もが社会の形成のプロセスに加わるべきだと訴えた「20世紀で最も偉大な芸術家」とも称されるヨーゼフ・ボイスの芸術と知られざる“傷”を、膨大な数の資料映像と新たに撮影された関係者へのインタビュー映像で明らかにするドキュメンタリー。
公開初日の3月2日(土)、アップリンク吉祥寺にて公開記念のトークイベントが行われ、群馬を拠点に活動を行う美術作家の白川昌生と、分野にとらわれない表現活動が注目を集めるモデルの前田エマがイベントに登壇し、芸術家ヨーゼフ・ボイスの魅力について語った。
最初に、ヨーゼフ・ボイスについて前田は「名前や作品についてはなんとなく知っていたけど、本作の中で紹介されるデッサンを観て、絵画とはかけ離れたような活動をしていたボイスだけれど、すごく上手だったんだという印象を持ちました」と感想を述べた。
ボイスが学び教鞭をとったデュッセルドルフ国立美術大学を卒業した経歴を持つ白川は、「何でもいろいろなことがアートになる。絵画や彫刻にとどまらず、思考したり、受けたインパクトを表現したり、そういうやり方のアートがあるということをボイスから学んだ」とボイスから受けた影響について語り、「彼は、アート制度や市場について、“これでいいのか!”と挑発し続けた造形作家+思想家+社会運動家というドイツの中でも特異な芸術家だった」と熱弁。
続いて、過去にヨーロッパをバックパックで旅した時のことに触れた前田は「ドイツのアート・シーンが一番面白かった」と話すと、白川は「ドイツは戦争で西と東に分断され、文化・芸術もダメージを受けた。70年代、そこから、もう一度芸術が盛り上がってく空気が作られていった。ドイツの現代アートの面白さはそういう流れから来ていて、その先頭を走ったのがボイスだった」と応える。
さらに、ウィーン芸術アカデミーに留学経験のある前田は、日本とヨーロッパにおける美術教育の違いについても言及。「アカデミーの教授自身が第一線で活躍する芸術家であり、作家としての生き様やたたかう姿を見ることができた意義はとても大きかった」と自身の留学経験を振り返り、「ボイスも自らが芸術家としてたたかう姿を学生たちに見せ続けた。人々を挑発し続ける姿は、興味のない人々からも注目を集め、“何かが起こっている”という思考や議論のきっかけを与え続けたのがボイスだったのだと思う」と語った。
最後に白川は「20世紀に活躍したドイツの芸術家の中で最も世界的な名声を手にした芸術家はヨーゼフ・ボイスであり、後世までずっと残っていくアーティストだ」と締めくくりイベントは終了した。
映画『ヨーゼフ・ボイスは挑発する』は、アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺、横浜シネマリンほか絶賛公開中。
白川昌生(しらかわ・よしお)
1981年デュッセルドルフ国立美術大学を卒業した後、群馬県を拠点に活動。1993年には地域と美術をつなぐ美術活動団体「場所・群馬」の創設。2017年《群馬県朝鮮人強制連行追悼碑》が「群馬の美術2017─地域社会における現代美術の居場所」開催直前に出品取り消しとなり、話題になる。立体作品や絵画制作のほか「日本のダダ1920-1970」(1988年・2005年)「贈与としての美術」(2013年)「彫刻の問題」(共著・2017年)の執筆など多岐に渡る活動を行う。
前田エマ(まえだ・えま)
1992年神奈川県生まれ。東京造形大学卒業。オーストリア ウィーン芸術アカデミーに留学経験を持ち、在学中から、モデル、エッセイ、写真、ペインティング、朗読、ナレーションなど、その分野にとらわれない活動が注目を集める。芸術祭やファッションショーなどでモデルとして、朗読者として参加、また自身の個展を開くなど幅広く活動。現在はエッセイの連載を雑誌にて毎号執筆中。
(オフィシャル素材提供)
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