2019-01-19 更新
大野和基(国際ジャーナリスト)、松江哲明(映画監督)、松崎まこと(映画活動家・放送作家)
マーク・ウォールバーグ主演×ピーター・バーグ監督の「Wバーグ」が4作目のタッグを組んだ話題作『マイル22』。公開を記念して、公開日直前の1月17日(木)、「アクション映画と実在する特殊部隊」と題したトークイベントが下北沢の本屋B&Bにて開催された。登壇者は国際ジャーナリストの大野和基、映画監督の松江哲明、映画活動家・放送作家の松崎まことの3名。
トークは、CIA事情に精通する大野の「喋れることは喋ります。殺させるようなことは喋れないけど(笑)」という観客には嬉しいギリギリトーク宣言から始まった。大野からすれば、『マイル22』はフィクション作品だが、実はそうでもないとのこと。本作には国家に属さない特殊部隊が登場するが「これは実際に存在します」ときっぱり! まさに映画で描かれている通り、その存在は誰も、CIAの同僚ですら知らないらしい。こういった特殊部隊は9.11発生時に増えたとのことだが、その時発足された部隊の数は実に600! ウサマ・ビン・ラディンを見つけたのもその600の中の1つの部隊であると明かした。
続けて、アメリカでは映画製作にCIAや軍が監修したり絡んだりすることが多いという話に。その理由はズバリ彼らがCIA・軍の正義的なイメージを作りたいからとのこと。意外性がありつつも納得の話に会場も湧いた。またCIAに関する突っ込んだ話も。採用されるには愛国心が重視される話であったり、また、意外にも給料が低いが経費は使い放題とのこと。採用された時からクレジットカードは6枚くらい与えられ、しかも無制限・無期限! 特殊部隊に課せられるミッションには命の保証がないかわり、ミッションを成功させるためにはいくら使ってもよいというCIAルールを明かした。また、CIAにとってアンガー・マネージメントできているかは大事とのことで、「この主人公はアウトです……(笑)。でも実際の任務中はOKだけど、日常生活ではできているような人物でないとダメです」と話した。
次に、オープニングで主人公CIA機密特殊部隊のリーダー:ジミーの生い立ちを紹介するシーンが凝った作りになっていて面白いと語る。松江はジミーについて「母親の教えで怒りを腕につけているゴムバンドをパンパン弾いてる。あんまり効果ないんじゃないかってくらいずっと怒鳴っていますけど、でも窮地になったら来てくれるっていう一面もありますよね」と役柄を解説。
そこで、松崎が「マーク・ウォールバーグ自体そういう人物だよね。若いころは問題ばかり起こして警察のお世話になっていた。20代前半まではまったく彼もアンガー・マネージメントできてなかった。映画に出演しはじめて更正したけど」とジミーとマークの共通点を語り、「あんな主人公初めて観た!」と驚きを表した。
次に本作に出てくる「“オーバーウォッチ”は最高機密だ」というセリフに関して大野が「実際は“Ground Brunch”と呼ばれるが、これは実際にあるんです。ほぼ同じです」と本作の任務はリアルなものであると大小判を推した。大野が更にCIAに詳しいからこそ知る身近な空港のセキュリティーも通れるもので作る爆弾の話をすると、松江が「この作品も市街地で戦闘が始まり、アパートに逃げ込んだ時にその場にあるものを上手く使い爆破するシーンありますよね」と細かい部分にもCIAらしいワザが見られると語り、「この映画は足し算が上手いのかもしれない。リアルを積み重ねている」と評した。
今まで実際の出来事を題材にした作品を作ってきたWバーグ作品に関して、実話を越したものを作ろうとしているが、エンドロールで実在の人物が出てくることによりクールダウンしてしまう。これには実話ならではの縛りを感じたが、今回の『マイル22』はフィクションでそれを全部とっぱらって、ネクストに行こうとしているんだなと感じる」と言い、松崎も「徹底的にリアルを描いて、そこにフィクションを乗っけてくる」と今までの3作品とは違ったものを体験できると語る。
トークの中盤、見どころをまとめた映像を上映し、その中でも迫力があるイコ・ウワイスのメイキング・アクション・シーンを公開! イコ・ウワイスが2人の敵に襲われるシーンで撮影前に念入りな打ち合わせとリハーサルをし、一糸乱れぬアクション・シーンの舞台裏を公開。迫力のアクション・シーンを見た松江は『ザ・レイド』を見て感動した人がこの映画に参加させてほしいという思いで作ったんだろうなぁ」と話す。「アクションが1台のカメラで撮られていたけれど、映画観るとものすごいカット割りになっていますよね」と話す松江はジャッキー・チェンについても触れ、「ハリウッド映画をやると遠慮しているのかな?と思わせるところがあって違和感を感じるけど、『マイル22』は映画全体がアクションになっているから損ねてなくていいなと思った!」と力説する。
そして松江はピーター・バーグ作品について「決定的な画面で監視カメラを入れてくる。今の映画って決定的瞬間でだれが撮ったか分からないような冷たい映像が多いと思う。監督がそこに懸けているのがすごい勇気だと思う」と感心した。「意識的に撮っている映像ではなくて、たまたま撮れた映像こそが怖いんだ!」と松崎が納得した。
更に松江は「ピーター・バーグは意味のない繋ぎがない! 編集が上手い!」と大絶賛。「観終わったあとまた観たくなる映画です。何回も確かめたくなるんですよね」と語り、松崎も『カメラを止めるな!』以上に2回観る価値がある」とコメント。続いて「この映画はオチのための映画ではないんです。いろんな視点から見ると全然変わる映画なんですよね。全て計算されて描かれている」と魅力を語った。
最後に大野は「映画を観ると僕が今日言ってたことが分かると思います。背景知識を知っていると分かりやすいと思います」とコメント。松江は「明日すぐ劇場で観るほうがいいと思います! その前に『ザ・レイド』と実話をもとにした『パトリオットデイ』『ローンサバイバー』を観ると、なぜこういう描き方をしてフィクションを撮ったのが予習としていいと思います」と事前予習の作品をお薦めした。
(オフィシャル素材提供)
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